露路裏や遊廓なぞに却て散歩の足を向ける。そして雨に濡れた汚い人家の灯火を眺めると、何処かに酒呑の亭主に撲られて泣く女房の声や、継母に苛まれる孤児の悲鳴でも聞えはせぬかと一心に耳を聳てる。或夜非常に晩く、自分は重たい唐傘を肩にして真暗な山の手の横町を帰つて来た時、捨てられた犬の子の哀れに鼻を鳴して人の後に尾いて来るのを見たが他分其の犬であらう。自分は家へ這入つて寝床に就てからも夜中遠くの方で鳴いては止み、止んでは又鳴く小犬の声をば、これも夜中絶えては続く雨滴の音の中に聞いた……
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