まだ笑ひ止まぬのを
新まいの雇女にお客と間違へられて、お文の叔父の源太郎が入つて来た。
「お出でやアす。」と、新まいの女の叫んだのには、一同が笑つた。中には腹を抱へて笑ひ崩れてゐるものもあつた。
「をツさん、えゝとこへ来とくなはつた。今こんな手紙が来ましたのやがな。独りで見るのも心持がわるいよつて、電話かけてをツさん呼ばうと思うてましたのや。」
お文は女どものゲラ/\とまだ笑ひ止まぬのを、見向きもしないで、銀場の前に立つた叔父の大きな身体を見上げるやうにして、かう言つた。
「手紙テ、何処からや。……福造のとこからやないか。」